音楽に携わっておりますとレコーディングとミックスと言うキーワードをよく耳にする事が多く、
音楽関係者の方はそれぞれの意味をご存じの方も多いと思います。
しかしレコーディングとミックスの間にはエディットと言う作業があり、
エディットの作業内容をご存じではない方や何となくわかっている方が多いので、
今回はエディットの全貌に注目してみたいと思います。
単にエディットと言ってもエンジニアによっては作業内容が異なります。
今回はCPR STUDIOでバンドレコーディングした際のエディット作業のご説明となり、
下記8項目が基本となります。
1.ドラムの位相調整
2.ドラムのリプレイス
3.ドラムの整音調整
4.弦楽器の位相調整
5.弦楽器の整音調整
6.ボーカルの整音調整
7.ボーカルのピッチ修正
8.ボーカルのオートメーション
ドラムのエディット作業
1.ドラムの位相調整
ドラムレコーディングは複数のマイクで同時に録る形(マルチマイク)が殆どで、
マイク毎にマイクと楽器の距離が異なります。
距離が異なると言う事は収録されるタイミングが微妙にズレてしまい、位相にズレが生じます。
位相がズレると個々の音が干渉を起こし始めて、本来の前に出るべき音が再生出来ません。
そこで本来収録されるタイミングに位相を調整する事で、個々の音の干渉を防ぎ本来の音を再生します。
2.ドラムのリプレイス
ダウンチューニングや大量のシーケンスが曲を覆い尽くす場合、
どうしてもドラム本来の音ではパワー不足になったりとイメージするドラムサウンドにならない事もあります。
そんな場合はドラムの音をトリガーで検知して異なるサンプル素材を鳴らす事により、
ドラムサウンドがよりパワフルになるように付加します。
CPR STUDIOではトリガー専用プラグイン(WaveMachineLabs Drumagog)でリプレイスを行っており、強弱やニュアンスにも柔軟に対応しております。
収録曲のイメージや音楽性、ドラマーの意向によってはリプレイスが不要な場合もあり、その際はリプレイスは行いません。
3.ドラムの整音調整
リプレイス後は整音作業に入ります。
整音作業とはノイズ除去や不要な波形をカットしたりフェードかける作業です。
キメが多い楽曲の場合、空白部分にシンバルの余韻が入ったりする事があるので空白部分をスッキリ聞かせる作業もこちらで行います。
ロック系やタイトな音楽性の場合、CPR STUDIOではタムとフロアタムに関しては音が鳴っている箇所のみ使用して、音が鳴っていない箇所は全て波形をカットしており、その作業もこのタイミングで行います。
またドラム録りが終了した際にもドラムのタイミング補正を行っており、
スネアやキックが早かったり遅かったりした際の修正も行っております。
タイミング補正を行うとリズムにヨレがないドラムサウンドとなり、
ドラム録り以降のレコーディングがスムーズ且つ仕上がりも綺麗になります。
弦楽器のエディット作業
4.弦楽器の位相調整
弦楽器もドラム同様にアンプから出力されている音を複数マイクにて収録しており、
各マイクに位相のズレが発生しますので調整します。
マイクプリアンプやマイクケーブルによって逆相になっている事も稀にありますのでこのタイミングでチェックします。
5.弦楽器の整音調整
続いて弦楽器の整音調整です。
弦楽器はドラムや打楽器に比べてリリース(音の減衰)が長いのでリリースに応じたフェードをかける事が重要なポイントとなります。
ピックが弦に当たる際に発生するノイズや弦移動の際のタッチノイズもこのタイミングで除去します。
ボーカルのエディット作業
6.ボーカルの整音調整
ボーカルは楽曲の中でもメインのなるパートなのでエディット作業も1番重要で時間がかかります。
まず他楽器同様に整音作業から始めます。
リップノイズや不要なブレス等は全てカットします。
また外部スタジオで収録された持込データが歪んでいる場合もこのタイミングで調整します。
7.ボーカルのピッチ修正
整音が完了したらピッチ修正です。
CPR STUDIOではレコーディング前にガイドメロディーを打ち込んだMIDIデータを頂いて、
ガイドメロディーを聞いてレコーディングを行う事が多く、レコーディングの際のピッチのズレを最小限に抑えております。
しかし全てのピッチを外さず、なおかつ曲に合ったニュアンスで歌うのは難しく修正する事もあります。
またレコーディング時にはハモりパートを録っていなかったが、
聞き込んでいく内にハモりが欲しくなった場合もこのタイミングで主メロからハモりを作り、
ケロケロボイスもこのタイミングで作成します。
ピッチ修正はAntares Auto-Tune、Celemony Melodyne、WAVES TUNEの3種類をご用意しており、用途に応じたプラグインを使用しております。
8.ボーカルのオートメーション
声を張らない事が多いAメロやBメロの平歌、声を張るサビでは音量差が大きく異なります。
コンプやEQ等でも調整は可能ですが出来る限り、プラグインに頼らず音量で調整する事が必要です。
オートメーションでボリュームをコントロールする事で自然なニュアンスをキープしつつバランスよく聞く事が出来ます。
以前はPro Tools上にてボリュームのオートメーションンを手書きにて行っておりましたが、
最近はWAVES Vocal Riderで大よそのオートメーションを書き出してから手直しする事が多いです。
最後に
上記エディット作業は1曲辺り最短で2~3時間、長いと1日1曲になる事もあります。
エディット作業の精度が荒いと必ずミックスの際に支障をきたし、仕上がりに大きく影響するので、
ここ数年はミックスよりエディットに時間をかけるエンジニアも多くなってます。
またアーティストご自身でエディット作業を行う方も多くなり、ご自身でエディットを行う事により、
納得行く仕上がりになりスタジオ代も軽減出来ます。
素晴らしいミックスに繋がるように妥協のないエディットを行っておりますので、
皆様からのご予約お待ちしております。
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